奈良県明日香村の高松塚古墳(7世紀末〜8世紀初め)の国宝壁画の劣化原因を調査している文化庁の検討会(座長、永井順国・政策研究大学院大学客員教授)は1日、報告書の素案をまとめた。保存管理上の問題で昭和と平成の2回、カビの大発生を引き起こしたことなど複数の要因が劣化を引き起こし、それをチェックする体制が欠けていたとした。今後の保存対策についての提言などを盛り込み、3月末までに報告書をまとめる。
素案では、昭和のカビ大発生(80〜84年)は、石室内の温度上昇や、修理作業で使った樹脂や薬剤の選択、石室内への立ち入りなどが複合して起こったとした。
また、石室解体へと進む契機となった平成のカビ大発生(01〜02年)は、石室と保存施設をつなぐ「取り合い部」で起きた崩落を止める工事で、カビ対策が不十分だったことが引き金となった。また、カビ処理に伴う人の出入りが増えたことが、さらにカビを発生させた可能性を指摘した。
壁画の保存方法を巡っては、壁画が発見された72年に外部の専門家による調査会が設置され、検討していた。しかし、76年に保存施設が完成した後は、01年以降のカビ発生まで新たな検討会は開かれなかった。
素案は、調査会が有名無実化し、現場の担当者が重要事項を判断するようになり、文化庁などの組織的な取り組みがなくなったことが遠因となった可能性を指摘した。【高島博之】
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